退社退職の違いと適切な電話応対。帰宅は?失礼させていただくは?

仕事のはなし

taisya
社会人として最初にぶつかる壁といえば電話応対の言葉遣いでしょう。
残業していたら上司宛の電話があったけど
「○○さんはもう帰っちゃいました」
をどう言えば良いのか分からず失敗した経験はありませんか。

この場合、どのように言うのが正解でしょうか。
今回は、退社と退職の違いや適切な電話応対を押さえた上で、
帰宅や失礼させていただく等のよく耳にする言葉についてもご説明します。

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退社と退職の違いは?適切な電話応対は?

意味の違い

退社については次の2通りの意味があります。
(1)退職。勤めている会社を辞めること。(「入社」の反対。)
(2)退勤。一日の勤務終了後に、会社から退出すること。(「出社」の反対。)

退職は、勤めている会社を辞めることです。(退社(1)の意味であり、「入社」の反対。)

似ている言葉で混同されがちなのが「帰社」です。
これは、外出していた人が会社に帰ってくることであり、
退社の意味とは異なります。
間違えないように注意しましょう。

適切な電話応対は?

担当者宛の電話応対では、基本的には「退社」という言葉を使うのが正解なのですが、
会社の方針によって「帰ったことを知られると相手に失礼なので知らせたくない」ため、
オブラートに包んだ言い方をするケースもあります。
また、逆に、「会社でそんな夜遅くまで働いていると思われたくない」ため、
ハッキリと「本日は定時で退社いたしました」という言い方をするケースもあります。

細かい表現については勤務先の上司に確認すべきですが、
ここでは基本の2通りを理解しておきましょう。

(1)帰ったことを相手に知られたくない場合

「本日は外出いたしまして、社には戻らない予定になっております。」

(2)帰ったことを相手に知られても大丈夫な場合

「申し訳ございませんが、○○は、本日は退社いたしました。」
「申し訳ございません。○○は、本日は退社しております。」

助詞の「は」が名前○○の後と、本日の後に2回出るのですが、
「本日は」と言わないで「本日退社」と言った場合に
「今日で退職した」と誤解される恐れがあるので、
「本日は」と言うほうが相手に正しい情報を伝えやすいです。

それに加えて、
・今は不在なので用件を聞いて伝える
・こちらから連絡させる

このどちらかの提案をすると「今日で退職した」と誤解されずに済むし、
相手に対して丁寧な対応になります。

この場合の言い方は、上の(1)(2)の言葉の後に
「お急ぎでしたらこちらからご連絡差し上げるように伝えますが?」
「明日の朝でよろしければ本人から連絡させますが、如何いたしましょうか?」

など、状況によって言葉を使い分けましょう。

ちなみに、会社を辞めた人宛の電話については
「○月をもって弊社を退社(退職)いたしました」
と、何月に退職したかを先に言うことで
「退社」の意味が「退職」であると相手に伝わります。

帰宅の方が退社よりも分かりやすそうだけど違いはあるの?

「本日は退社いたしました」が正しい使い方は理解したものの、それなら
「本日は帰宅いたしました」の方が、「退職」の意味を含む「退社」よりも分かりやすいのでは?
と感じる方もいるでしょう。

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でも、上で話したように会社の方針によっては取引先に対して
「相手よりも先に帰った」ことを伝えたくない風潮がある会社(上司)もあるので
「帰宅」は使わないほうが無難です。

また、会社を出たのは事実ですが、まっすぐに家に帰宅したかどうか不明ですし、
これは当人の自由なのです。
電話対応では自分の思い込みで相手に余計な情報を加えてしまうと
問題が発生することもあるのです。
ですので、今回の電話応対では「会社から出て今日は戻らない」
という事実のみを伝えるために「本日は退社」と言うのです。

退社を失礼させていただきました、と言う方が丁寧なの?

夕方、取引先の担当者に電話すると不在のことって結構ありますが、
その時に電話に出た事務の女性に

「申し訳ございませんが、○○は本日失礼させていただきました」

と言われることが多いです。
これ、丁寧な言葉遣いなのだけど、なんとなく変だと感じませんか。

この理由は2つあります。
「失礼」という言葉を「退社」の言葉の代わりに使うのが間違い。
「させていただく」という敬語の使い方も間違い。

失礼という言葉は「礼を失する」という意味で、
その日の勤務終了後に上司や同僚への挨拶として「お先に失礼します」と言いますが、

「(先に帰るので)すみません」という気持ちの言葉であり、
「失礼」は「退社(退勤)」という意味にはなり得ません。

ですので、電話対応時の相手に「失礼した」と言うのは誤りです。

また、「させていただく」という言葉の本来の使い方は次の2つがあります。
(1)相手や第三者に許可を受けた場合
(2)させていただくことで何か恩恵を受ける場合(物事だけでなく気持ちを含む)

敬語の使い方は難しく、「させていただく」という言葉を
実際に使わなければいけない場面もあるのですが、
分からないけど丁寧っぽいから使っておけば無難だろう、と安易な考えでなく、

迷った時には
・誰かの許可があって「させていただく」の?
・「させていただいて」何かの恩恵を受けるの?
と考えてみることが大切です。

今回は、電話の相手に対して、帰る行為を「失礼させていただく」のでなく、
「退社(退勤・帰宅)させていただく」わけでもないので誤りなのです。
(繰り返しますが、正しい回答は、上の章の「本日は退社いたしました」なのです。)

ただ残念なことに、ビジネスマナー研修の電話応対で、これが誤った日本語だと気付かず、
「丁寧な話し方だから」という理由で最適だと教える教室、指導者も存在するようです。
また、「退社」だと「退職」と勘違いされる恐れもあるため、
敢えて「失礼させていただきます」を使うという会社もあるようです。
日本語の使い方としては間違っているのですが。

昔は間違っていたとされる言葉遣いも、世の中に広く浸透してしまうと
正しい日本語として認められる用語も現在ではいくつか出てきていますが、
「失礼させていただく」については、上でお話ししたように、2点の問題があるので
将来的にも、正しい日本語として認められるかどうか怪しいところですね。

さいごに

ただ、会社によって考え方も異なるので、会社で推奨している言い方があるかを
まず確認し、それに倣うのが無難です。

もし会社としての推奨が無い場合には、以下のように考えていくと良いでしょう。

正しい日本語という視点では
「本日は退社いたしました」「本日は退社しております」等ですが、
「退社」の意味が2通りあるため、伝え方によっては
「退職した」と誤解されることもあります。

ですので、「本日は退社」を伝えると同時に
伝言を聞いたり、翌日こちらから連絡させる旨を伝えることで
「退職」の誤解を取り除くのがベターです。

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電話応対はまず、この形を覚えて使えるようにして、
慣れてきたら「相手がなぜ電話をかけてきたか」を考えて
用件を解決できるよう対応していきましょう。

コメント

  1. M より:

    「本日は失礼させていただきました」と使っている人の殆どは上記の内容を解った上で、
    「退職」の誤解を取り除く為に、「本日は失礼させていただきました」を使っていると思いますよ。

    • ゆきえ より:

      Mさま

      コメントありがとうございます。
      日本語って難しいですよね。
      「失礼」の誤った敬語については実は私が昔、新人だった頃に怒られたという記憶が鮮明にあり・・・というのがあり、このように書きました。(恥ずかしながら、今回記事にした他の「退社」「帰宅」などの言い方についても、全て自分の失敗経験が元です。)

      ただ、今は日本語も様々な流れで変化しているものもあり、昔だったら誤りとされていたものも今後認められていく可能性がありますよね。今のところ「失礼」がどうなるのかは全く見当つきませんが。

      ただ、正直なところ、知っていて使うか、知らないで使うか、というのは大きな問題だと思うのですよね。そして、ウン十年社会人をやっていれば当然「間違いだと知っていて使っている」ことでも、新人からすると「何ソレ、知らない」なんてことも多いだろうし。

      ただ、今回、ご指摘いただいて本文を読み直したところ、「失礼」は完全に否定している書き方になっていたと感じましたので、少し文章を訂正いたしました。ご指摘ありがとうございました。

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