災害 | ちょっとした工夫で心豊かな生活を https://richlife100.com 個性的な発想をする主婦の、ちょっとした工夫綴り。お悩み解決のヒントになれば幸いです。 Thu, 04 Aug 2022 15:14:34 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.8.7 72345923 城山ダム事前放流の誤解と実際のデータ比較。令和元年台風19号被害 https://richlife100.com/9291.html https://richlife100.com/9291.html#respond Sun, 20 Oct 2019 09:37:24 +0000 https://richlife100.com/?p=9291 城山ダム事前放流の誤解と実際のデータ比較。令和元年台風19号被害はブログ、ちょっとした工夫で心豊かな生活をに掲載された記事です。

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令和元年台風19号において注目された神奈川県城山ダムの緊急放流については評価の声と非難の声が両方ありましたが、実際には、出来る限りの事前放流を行った上での緊急放流でした。

でも、前記事(ダムの事前放流しなかったって本当?予備放流で空っぽに出来ないの?)でもお話ししたように、ダムのことをきちんと理解しないまま情報発信したマスコミや、鵜呑みにした政治家等が不正確な情報を伝えたために、「ダム業務の杜撰さによる人災だ」という悪いイメージが広まったようです。

■不正確な情報の一例として以下のページがあります。
「台風19号 6ダム緊急放流 事前の水位調整せず」を共産党江尻加那氏などが調査
緊急放流の6ダムで事前放流せず 国交省・自治体に重大責任

そこで今回は、城山ダム事前放流に至った経緯や塩原ダムの水位等について、実際のデータに基づいてまとめました。(私は国交省の回し者でも、ダム愛好家でもありません。河川砂防業務に詳しい知人から聞いた話を含めてまとめています。)

城山ダム事前放流と緊急放流の誤解とは?

城山ダムの事前放流については様々な誤解があったのですが、その大きな要因として、

  • 緊急放流が夜行われたこと(夜は危険なのになぜ朝まで待てなかったのか)
  • テレビでニュースになったのが緊急放流直前の時刻だったこと(知るのが遅すぎて、今から逃げられるわけない)
  • 緊急放流は下流の被害が甚大だから避けるべきだという思い込み
  • 事前放流すれば緊急放流を避けられたという思い込み

このようなことがあるでしょう。その他、中には以下のようなことを考える人がいたかもしれません。

  • ダムの存在そのものが許せないという気持ち
  • ダムを管理する役所は怠慢だと思っている

ですが、実際には、避難勧告は昼間のうちから行っていました。

城山ダム緊急放流の当初の発表

城山ダムの緊急放流は最終的に午後9時半に開始されましたが、当初予定夕方5時ということが周辺地域に通知されたのはその3時間以上前(午後1時過ぎ)で、周辺の自治体では速やかに避難するよう周辺地域に周知されていました。
全国的なニュースになったのが直前というだけで、ダム周辺の人々への伝達はもっと早かったのです。

緊急放流発表と当日の気象条件等

ダムや河川砂防関係の従事者は、被害を出さないよう、万が一被害が出る場合でも最小限にしたいという思いで日々業務を行っています。特に、気象庁からの注意報や警報が発令されると、技術系の複数の担当者が24時間体制で水位などを監視して対応しています。

緊急放流の当日は、

  • 台風接近が夕方以降で、特に雨が酷くて急激に水位が上がった
  • 緊急放流開始時刻午後9時半頃に雨が落ち着いてきた
  • 2019年10月12日の満潮時刻16:12、干潮時刻22:19(神奈川県藤沢市・湘南港の場合)

というような気象や水位の推移があったことが大きかったのですが、更に城山ダムでは近くの宮ヶ瀬ダムや相模ダムとの連携を行っているし、その他周辺河川の水位も監視しつつ、バランスを保ちつつギリギリまで持ちこたえていました。

もちろん、夜に緊急放流するのは大変危険なことですが、避難は当初通知した午後2時頃から開始していたし、それを出来るだけ引き延ばして、緊急放流した際の逃げ遅れがないようにしたことや、緊急放流する際の下流河川の氾濫ができるだけ回避できるように、ということで対処していたのです。

※城山ダムの事前放流、緊急放流、周辺流域への避難勧告等に関する業務は、以下の資料中の「資料5 城山ダム操作規則 資-33〜資-38」「その2 城山ダム放流容量〔抜粋〕資-39〜資-51」に則って行われています。
資料

緊急放流はダムに入った水量分だけ出すという行為

緊急放流については別記事で詳しくお話ししておりますが、ダムに入った水量だけを出す行為なので「川の氾濫を延命処置してくれていた」だけに過ぎません。「ダムがあるから下流域は絶対安全」ではなく、いざという時に時間稼ぎしてくれるだけの存在なのです。
ですから、緊急放流があると通知されたら、「本当にあるかどうか分からない」と悠長なことを考えず、即座に安全の確保をしなければならないのです。

事前放流の量には限界があり、ダムの貯水容量にも限界がある

事前放流についても別記事でお話ししましたが、実は城山ダムは、ダムに流れ込む範囲(流域面積)がかなり広いのに、豪雨の際に水を貯める容量が少ないという欠点があります。

城山ダムの近くにある宮ヶ瀬ダムと比べると、流域面積が約12倍なのに洪水調節容量が約6割しかないという小さいダムです。
(城山ダム→流域面積1201km2、洪水調節容量2750万m3
宮ヶ瀬ダム→流域面積101km2、洪水調節容量4500万m3)
ですから、城山ダムは確かに治水ダムとしての目的もあるとはいえ、今回のような豪雨においては絶対安心とはいえないのですね。(ただ、城山ダムは宮ヶ瀬ダムや相模ダム等と連携を図ってダムや河川を守るべく調整しています。)

また、事前放流もギリギリの低い水位までもっていこうと懸命に放流していたのですが、ちょうど台風が通過する前から雨量が激しくなり、水を貯める容量が少ないため短時間で急に水位が上昇してしまったのです。

ダムの洪水吐(放流する穴)は少ないので短時間で放流できない

城山ダムに関して言うと、洪水吐は6門あります。

このダム写真の6門のうち、中央2門(オリフィスラジアルゲート・高さ7.4m)が常時洪水吐として事前放流(予備放流)を行った箇所で、緊急放流の際には両脇4門(クレストラジアルゲート・高さ16.7m)を開いて水を放流します。

ということで、放流できる洪水吐はこの6門しかない(発電用に引く別の箇所等もありますが、さほど大きくないので今回のような事態では意味がない)ため、短時間で大量の水を放流するのは難しいし、常時洪水吐が結構高い位置にあるため、最大限水位を下げようと努力しても、予備放流水位止まりなのです。

城山ダムや周辺河川の情報公開

実際にはこのような形で情報公開されています。
神奈川県:雨量水位情報(洪水予測一覧 相模川)

当日の情報はこちらの方のツイートで確認できます。

また、こちらのサイトではダムの時間ごとの変化が確認できます。
国土交通省:川の防災情報(城山ダム)
緊急放流当日の水位はこちらの画像をご確認ください。

ちなみに、宮ヶ瀬ダム(平成12年)は城山ダム(昭和40年)より新しいため、低い位置に非常時だけ使う洪水吐があります。(以下の3つのリンク先を比較するとよく分かります。)
宮ヶ瀬ダム:ダム運用の流れ(平常時)洪水時非常時

城山ダムの実際の運用については、こちらの記事に詳しく書かれています。
城山ダムリーフレット:3ページ「ダム管理の概要」

塩原ダム他もダム水位や緊急放流について

ちなみに、国交省「川の防災情報」によると、今回2019年10月に緊急放流したダムにおける台風前の実際の水位は以下の通りでした。(数字は全て標高です。)

・美和ダム(長野)約801m(洪水期制限水位808m、予備放流水位805.5m、最低水位796.5m)
・城山ダム(神奈川)約114m(洪水期制限水位120m、最低水位95m)‬ ‪
・塩原ダム(栃木)約399m(予備放流水位=最低水位398.5m)
・高柴ダム(福島)約48m(常時満水位52.5m、最低水位44m)

以下の茨城県の2つのダムは国土交通省の川の防災情報に記載されておらず、10/12における水位が確認できませんでした。
・竜神ダム(茨城) (洪水期制限水位146.5m、最低水位136m)
・水沼ダム(茨城)(洪水期制限水位は時期により異なり273.3~275.9m※、予備放流最低水位272.2m、最低水位270m)

ただ、美和ダム、塩原ダム、高柴ダムについては台風前の水位は最低水位に近い状態だったため、事前放流をしないで済んだことはデータから確認できます。どのダムも、容量が多くないのに短時間の集中豪雨によりいっぱいになってしまったから緊急放流せざるを得なかったのです。

さいごに

ダムの事前放流をしなかったので国土交通省やダム管理者の怠慢だ、というニュースやネット情報が出ていましたが、データを確認する限りでは、実際には事前放流すべき時点で正しい対応がなされていたはずです。(一部報道では「利水目的部分には手をつけていない」という書き方があったのですが、城山ダムにおける予備放流は利水目的部分の一部に手をつける放流なので、正しい報道とはいえないでしょう。)

ちなみに、城山ダムの支流である串川で死亡事故があり、それも緊急放流による影響といわんばかりの報道でしたが、事故のあった場所は城山ダムよりも約50m標高があることから因果関係はありません。

そして、「有識者の提言による事前放流」については確かに「出来る限り事前放流を柔軟に行うように」という内容でしたが、放流する穴が低い位置に無い場合、簡単に水位を下げられるものではありません。

今回ニュースになった記事の元は共同通信で、それをそのまま地方新聞の神奈川新聞などが取り上げたようですが、新聞社はきちんとしたデータを収集確認せずに掲載しているのではないか、と思われます。

その後、ニュースの錯綜ぶりに見かねた元国交省の政治家が投稿されている記事を見れば、ダム管理に携わる方々が現行の法律の中で出来る限りの対処を行なっているであろうことが分かるはずです。
アゴラ:元国交省職員として言いたい!緊急放流に至るギリギリの判断

ダム関連については人命や様々な財産に関わることから非常に大規模かつ綿密な方策が講じられ、私達国民の知らないところで様々な事業者、研究者が改善すべく努力していますし、ダム管理現場は住民を危険に晒さないよう出来る限りのことを行うべく、ギリギリのところで必死に調整しているのです。

もちろん、緊急放流に至らないで済むようなダム対策は今後必要になっていくでしょう。とはいえ、ダムの改修には莫大な費用がかかりますし、我々の税金を元にした予算をそこまで回せるのか分かりません。

ですから、我々は「ダムは絶対に安全」という意識を捨て、ハザードマップを確認したり自治体の発信する情報を聞き、豪雨の際には早めに避難するなど、自分達でできることをしていくことが必要でしょう。

城山ダム事前放流の誤解と実際のデータ比較。令和元年台風19号被害はブログ、ちょっとした工夫で心豊かな生活をに掲載された記事です。

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城山ダム事前放流しなかったの?予備放流では空っぽに出来ないの? https://richlife100.com/9279.html https://richlife100.com/9279.html#respond Fri, 18 Oct 2019 04:16:14 +0000 https://richlife100.com/?p=9279 城山ダム事前放流しなかったの?予備放流では空っぽに出来ないの?はブログ、ちょっとした工夫で心豊かな生活をに掲載された記事です。

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令和元年台風19号では日本各地の被害がありましたが、中でも注目されたのが、神奈川県の城山ダムをはじめとする合計6ヶ所のダムにおける緊急放流ですよね。

緊急放流については別記事で詳しくお話ししましたが、ダムが緊急放流に至った推移についてはニュースやネット情報が錯綜しており不正確な情報が広まっているのが気になったので、この記事でダムに関する正確な情報をまとめました。

今回は、

・城山ダムの事前放流は本当に行われなかったのか
・予備放流と事前放流の違い
・ダムは空っぽにできないのか

以上についてお話しします。

◆緊急放流に関する疑問についてはこちらの記事がおすすめです。
ダムの緊急放流なぜ?しなかったらどうなる?事前に出来ないの?

城山ダム事前放流は行われなかったのか?

ダムの事前放流は、実際には行われていました。ただ、今回緊急放流を行った全てのダムではなく、事前放流する必要のないほど低い水位のダムもあり、そこでは行わなかったのです。

また、今回多くの人に誤解を招いたのが新聞紙面やネットニュースに掲載されていた「西日本豪雨の教訓として有識者から提言されていた事前の水位調節」という言葉です。

結論を言いますと、「有識者から提言されるような水位調節(事前放流)」はダムの設計上、提言から1年程度で簡単に出来ることではありませんし、現状ではその提言を受けて国交省や土木の研究者等がどのように実施出来るか研究している段階なのです。

そもそも、ダムには日々の水量管理から緊急放流に至るまで操作規定が設けられており(ダム毎に内容は異なります)、それに則って運用されています。洪水期にどのような対策を行うのか、どこに通達するのか等も細かく決められています。

城山ダムの操作規定については以下の資料中に詳しく書かれています。
資料
※この中の「資料5 城山ダム操作規則」「その2 城山ダム放流容量〔抜粋〕」をご確認ください(資-38〜資-51)。

そして、実際のダム管理事務所や下流自治体等ではダムに関する説明会や訓練なども行われていて、今回のような緊急事態の際に速やかに避難行動等が出来るよう体制を整えているのです。

■ダムが今までどのように取組を行ってきたか興味がある方は、こちらの記事を読むと分かりますよ。
国交省:ダムの洪水調節機能と情報の充実に向けた取組~令和元年8月までの出水におけるダムの洪水調節も総括~

この記事下段にリンクがある、以下の記事に写真や図入りで分かりやすく説明されています。
令和元年8月までのダムの取組と洪水調節状況(PDF形式)

ではなぜ、「事前放流しなかった」という記事が掲載されたのでしょうか。
それについては、次にご説明するキーワードの解釈が問題になっています。

ダムの事前放流と予備放流の違いは?

ダム用語の「放流」について調べてみると、放流に関する類似語が複数出てきます。その中でも緊急放流は最終手段ともいえる方法ですが、それ以外に「事前放流」と「予備放流」という言葉があるのですよね。素人には分かりにくい言葉なので、この2つについてご説明しますね。

【予備放流】
予備放流は洪水調節目的の放流です。(平常時なら手をつけない)利水容量となっている水を放流して、あらかじめ洪水に備えておくことです。この放流では、予備放流水位(制限水位)と呼ばれるところまで水位下げることができます。【事前放流】
事前放流は、以下のように2通りの解釈があります。(1)洪水になると想定した場合に、制限水位以下まで放流して洪水に備える(ただし、利水の共同事業者に支障を与えない範囲)
(2)制限水位以上だった平常時の水位を、洪水になると想定した場合に、制限水位まで下げる放流。

これは、兵庫県のホームページの「予備放流」と「事前放流」についてに書かれていることです。
そして、(2)の解釈は予備放流と同じ意味になります。
(1)の解釈は「事前放流」という言葉が出てきた背景や動きを見ると分かるのですが、制限水位以下まで事前放流するというのは様々な角度からの検証ができていない現段階では無理な話なのです。

事前放流に関する考え方の推移

元々、事前放流という言葉は古くから使われていた言葉ではなく、洪水対策として国土交通省で平成16年(2004年)12 月に策定した「豪雨災害対策緊急アクションプラン」におけるダム有効活用の手法の一つとして登場した言葉でした。

その後、近年の気候変動の影響による水害の頻発と激甚化や日本の厳しい財政状況を踏まえて、老朽化した既設ダムを今まで以上に有効活用すべく、平成29年(2017年)6月27日に「ダム再生ビジョン」が策定され、事前放流がより柔軟に出来るよう方策を行うこととなりました。

このダム再生ビジョンの方策としては、洪水前の利水容量の放流を今まで以上に柔軟に行うことや、堤体のかさ上げ、水深の低いところでの穴開け、レーダー雨量計の高性能化等があります。

これに関して国土交通省では下記の点検要領を作っており、国直轄と水資源機構のダムに関してダム規則を見直すよう指示しています。(城山ダムは神奈川県管轄のダムなのでこの指示はなされていないのかもしれません。)
ダムの機能を最大限活用する洪水調節方法の導入に向けた ダム操作規則等点検要領及び同解説

そして、それに関連して翌年、平成30年12月に出されたのが今回問題となった「有識者の提言」です。
異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能と情報の充実に向けて(提言)

ただ、上の資料よりも、事前に作成された提言案(平成30年11月27日)の方が図入りで分かりやすいので内容を簡単に把握したいならこちらがおすすめです。

異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能と情報の充実に向けて(案) ~異常豪雨の頻発化に備えたダムの洪水調節機能に関する検討会の提言(案)

ダム事業に携わる人でないと分からないかもしれませんが、ダムの建設や改修を行うには緻密な設計が必要で、このような「有識者の提言」がなされてから1年や2年で簡単に運用段階まで進めるものではありません。

例えば、既設ダムで更に放流を柔軟にする場合、比較的新しいダムならこの考え方を盛り込んで放流しやすいよう設計されています。ですが、古いダムの場合には放流の穴を増やさなければできないものもあり、その場合はコンピュータ解析による計算を行って穴の位置や大きさ、数量を決めて既存コンクリートに穴を開ける作業を行うことになるのですが、あまりにも計算が複雑なためコンピューターだけでは完璧な答えが得られません。ではどうやって行うかというと、実際に数十分の1の精巧なダム模型を作って、実際に水を流して間違いがないか検証してから施工することになります。

このように、提言を1つ実現するにも膨大な作業が必要であり、提言を全て実現化するには長い年月が必要になるのです。

ダムは空っぽにできないのか

ところで、ダムに関して素人だと、「ダムを空にしておけば緊急放流しなくて済んだのに」と思ってしまう傾向があるのですが、ダムを空にするのは無理です。(ただし、治水目的ダムは平時空っぽにしておくケースもあります。)これには以下のような様々な理由があるのです。

(1)多くのダムの目的は治水(洪水調節)だけでなく他の用途もある。
ダムによって異なりますが、水道用水や工業用水、農業用水、水力発電などに使うこともあり、完全に水が無い状態にするわけにはいきません。(水が無くなったら断水するし、水力発電に利用している場合は電力不足になり、地域の工場の操業もストップする事態になります。)

このような多目的ダムの場合、ある程度の水量を維持しておかなくてはなりません。その最低限の水位が、現状の「予備放流水位」になっています。もしそれ以上に下げてしまい、実際に大雨が降らずに水位が上がらなかった場合は損害補償に繋がってしまいます。

(2)ダムに水がないと生態系の維持が出来なくなる。
ダムに常に水があることで河川の水質を保つことができます。また、生態系の維持もできるのです。これはダムを一時的にでも空っぽにしては保てなくなります。

(3)ダムの全ての水は短時間で抜けるものではない。
ダムの水量は膨大なため、一気に短時間で行うことはできません。台風が来ることが分かっていても、1~2日で抜くことが出来ないので、そのダムに確実に豪雨が来るという予測が出来ない限り不可能です。

(4)気象予報の精度は上がっても、雨量予測の精度は上がっていない。
日本の気象予報の精度は非常に優秀と言われていますが、残念なことに、台風の進路予測はある程度出来るけれどダム単位での雨量予測は非常に困難なのです。(台風は、雨でなく風が主のケースもあるし、数日前の段階では進路が定まっておらず直前になって逸れる可能性もあります。)

また、定められた水位よりも下げたけど実際には見込んだ雨量に到達しなかった場合、水不足で困ってしまいます。谷筋が1つ異なるだけでも雨量が全然違うのはよくある話ですし、やはり数時間前にならないと確実に「このダムに何m3降る」という予測は難しいのですよね。だからこそ、普段から洪水期制限水位よりも下にはできないし、洪水が来ると分かっていても予備放流水位よりも下げることができないのです。

(5)ダムを造る際、空っぽにする想定で設計していなかった。
既にお話しした有識者の提言で重要なポイントがこの部分です。そもそも既設ダムを設計した段階では、今回の規模の集中豪雨を想定せずに造っているため、「集中豪雨に備えてもっと水位を下げておきましょう」と言われても、直ぐに対応できないのです。

そもそも、城山ダムには低い水位から大量の水を出せる洪水吐がないので、もっと水位を下げたくても現状では不可能です。
ダムのことを知らない素人は「ただ下げるだけだろう」と思うかもしれませんが、洪水吐(放流する穴)の位置や数が足りるかという問題等もあり、簡単に許可を出せるわけではありません。

さいごに

ということで、今回の城山ダムでは、最善の手を尽くした結果の緊急放流だったのですが、実際の城山ダムやその他ダムに関する水位等データについては次の記事でお話しします。
城山ダム事前放流の誤解と実際のデータ比較。令和元年台風19号被害

城山ダム事前放流しなかったの?予備放流では空っぽに出来ないの?はブログ、ちょっとした工夫で心豊かな生活をに掲載された記事です。

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