礼服と喪服の違いをご存知ですか。
男性用スーツの常識を知っている女性はあまり多くないでしょう。
でも、結婚したら夫のスーツを手入れ管理するのは妻の役目という家庭も多いでしょうし、いざというときに知らないと困ってしまいます。
今回は、男性の礼服や喪服、スーツの違いや、海外で恥をかかないために日本だけの礼服の常識についてお話しします。
礼服と喪服の違い 男物は?
1.礼服と喪服の違い
(1)礼服
礼服は、冠婚葬祭その他の儀式の時に、威儀を正したり敬意を表する場合に着る服で、フォーマルウェアともいい、礼服を着た状態を正装や礼装といいます。
また、服によって格式があり、正礼装、準礼装、略礼装、平服と区別されます。
(2)喪服
礼服のうち葬儀や法事などに出席する際に着るもので、黒や薄墨色が一般的です。
昔の日本では黒でなく白が喪服とされていたため、その名残で今でも和服の場合に喪主や喪主の配偶者が白を着用することもあります。
喪服は3つの格式に分けられ、高いものから順に正喪服、準喪服、略喪服となります。
この3つは、遺族や親族か、一般弔問客かで相応しいものが異なりますし、通夜と葬儀告別式でも異なるため、それぞれの立場や場面に応じた喪服を着るのがマナーとされています。
では、具体的に葬儀において誰が何を着るか確認しましょう。
2.喪服 男性の場合は何が相応しいの?
(1)遺族や親族の場合
【正式なもの】
通夜・・・準喪服(ブラックスーツ※1)または略喪服(ダークスーツ)
葬儀告別式・・・正喪服(モーニング※2)または準喪服(ブラックスーツ)
【最近の傾向】
通夜、葬儀告別式・・・準喪服(ブラックスーツ)
黒無地のシングルスーツかダブルスーツです。
(ここでいうブラックスーツは紳士服の礼服売り場にあるもので、黒いビジネススーツではありません。)
準喪服ですが、最近では一般的な喪服となっています。
※2 モーニングコート
上着とベストは黒、ズボンは黒とグレーの細いストライプ模様です。
正喪服ですが、葬儀の場合は通夜では着用せず葬儀告別式のみ。
(2)一般の弔問客
【正式なもの】
通夜・・・準喪服(ブラックスーツ)、略喪服(ダークスーツ※3)、地味なネクタイやスーツ等
葬儀告別式・・・準喪服(ブラックスーツ)か略喪服(ダークスーツ)
【最近の傾向】
通夜、葬儀告別式・・・準喪服(ブラックスーツ)
濃紺や濃グレー等の無地や地味なストライプ等のスーツ。
ただし、ネクタイや靴、靴下は黒にすること。
とりあえず弔問する場合や、一般弔問客の通夜、葬儀告別式はこれで大丈夫です。
3.喪服 その他身に着けるものについて
喪服ではワイシャツなども細かい指定があるので、以下のことを確認しましょう。
- ワイシャツ・・・白色。
- ベスト・・・上着と共布の黒色が原則です。
- ネクタイ・・・黒色。
- 靴・・・黒色。エナメル等の光沢のあるものや金具などが付いているものは避けましょう。
- 靴下・・・黒色。
- 冬のコート・・・黒や濃紺、濃いグレー色などの地味な色がおすすめです。
※ネクタイピンは付けません。
※カフスボタンは付けても良いのですが、パールか光らない素材の黒石にします。
(ダウンジャケットや革製は避けましょう。)
礼服とスーツの違いは?
「礼服の黒スーツでなく、黒いビジネススーツでも代用できるのでは?」
と思うかもしれませんが、この2つには決定的な違いがあるので、社会人の場合はブラックスーツとビジネススーツを使い分けないと恥をかくことになります。
どのように違うか、定義と材質について見ていきましょう。
1.定義の違い
スーツは「上下同じ素材で作られた、一揃いの衣服」という意味です。
一方、礼服は「スーツの中で、冠婚葬祭など、儀礼の場面で身に着ける衣服」という意味であり、スーツの中の一部が礼服に該当します。
ちなみに、喪服は「葬儀に参列する際の礼服」なので、3種類の関係は、
スーツ>礼服>喪服
となります。
2.生地の違い
礼服と黒のビジネススーツを使い分けしなければならない理由は、生地の違いが歴然としているからです。
礼服 ・・・光ったりテカリが出ないような深い黒で昼夜問わずどこで見ても黒い
黒スーツ・・・光を反射する
その他、織り方も全く異なります。
礼服は重厚感がありますが、黒スーツは線を重ねて無地にした印象なので、黒のビジネススーツで喪服の中に並んでしまうとグレー色に見えてしまいます。
逆に、礼服でビジネスの場に出てしまうと、黒が深すぎて違和感があります。
3.小物類の違い
礼服 ・・・ベルトをしない(フォーマルスーツはベルト通しがなく、ズボン吊りを使用)
黒スーツ・・・ベルトをする
【礼服のシングルとダブルの違いは?】
礼服(ブラックスーツ)はシングルボタンとダブルボタンがあり、日本ではダブルの方が格が高いとか、既婚者はダブルを着る方が貫禄があって良いと思われているようですが、これは日本人の誤解であり、実際にはボタンによる格の違いはありません。
シングルよりもダブルの方が値段が高いため、それを格式の高さと勘違いする人が多いようですね。
じゃあ結局、喪服は何着必要なの?
男性の場合は一着、夏冬兼用を持つのが基本です。
準礼服である、所謂ブラックフォーマルで冠婚葬祭兼用できるものを買えば、ネクタイだけを変えて喪服としても結婚式にも着られます。
ちなみに、ダブルかシングルか、については好みの問題ですが、ダブルだとお腹まわりが気になる人でも貫禄があるように見えるのですが、シングルの方が圧倒的に多いです。普通の体型の男性で、特にこだわらないならシングルのほうが無難でしょう。
礼服は日本だけ違う?間違っているの?
日本と海外では礼服に対する常識が異なるため、海外で恥をかかないためには違いを理解しておくほうが良いでしょう。
1.本来の礼服
着用する時間や場所に合わせて細かいドレスコードが定められており、次のようになっています。
(1)正装
(昼)モーニングコート、(夜)燕尾服かタキシード
(2)準礼装
(昼)ディレクターズスーツ、(夜)黒以外の上着のタキシード
(3)略礼装
礼服としての黒スーツ(ブラックスーツ)、ダークスーツ(グレー、ネイビー、フォーマル以外の黒など)
2.日本の場合
所謂「礼服」は黒スーツ(ブラックスーツ)ですが、これは正装、準礼装に当たらず、略礼装なのです。
なぜ日本では略礼装である黒スーツを礼服として扱うかについては2つの説があるようです。
・昭和30年代頃に「生活簡素化運動」があった際に紳士服メーカーが営業戦略で
「ネクタイを変えるだけで結婚披露宴や葬儀などあらゆる儀礼の場で使い回しできる服」として開発したのがきっかけという説。
・昔の日本の正装は「慶事が黒、弔事が白」で、葬儀の際、仏様だけでなく喪主や親族は白装束、弔問客は普段の着物で参列していたのですが、明治時代に皇室の喪服が黒に制定したことで国民が倣い、昭和30年代に洋服が普及したことがきっかけで日本の正装である黒紋付の洋装として昭和41年に黒服礼服が開発されて一気に普及したという説
どちらかというと後の説が真実のようです。
3.日本と海外の常識の違いは?
日本の礼服の常識が異なるため、海外で礼服が通用しないという意見もあるのですが、海外では黒スーツは「ダークスーツの一種」と解釈されており略礼装としてのコードに則ったものですし、現在は海外でもタクシードやモーニングでなく、ダークスーツで十分とされる場が多くなっているので日本の礼服でも問題ないという意見もあります。
但し、やはり海外で公の場に出る機会があれば、本来の礼服の定義と日本の礼服の位置づけはしっかり理解しておく必要があります。
また、それ以外では、黒スーツで白ネクタイという日本人の結婚式の常識は、外国人から見るとマフィアの人間と思われるケースがあるので、海外ではネクタイの色には注意しなければなりません。
さいごに
男性の礼服や喪服は、女性にとっては馴染みがなく把握するのは大変かもしれませんが、日本の場合は略礼装の礼服を一着持っていれば大丈夫なので、それなりの値段のものを買って大事に使い、保管するようにしましょう。
葬儀や法要のことで分からないことがあったら他にも記事があるのでご覧ください。
→葬儀法要等で恥をかかないための知識集~目次
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