梅の実がならないのはなぜ?花梅実梅の違いが原因?雌雄の関係は?

雑学


毎年梅まつりに行く公園で満開の梅を観賞していたところ、子供に

「毎年梅の花は沢山咲くけど、実が全然ならないのは何故なの?」

と訊かれて困ってしまいました。
そこで、

・梅の実がならない理由は何か?
・花梅実梅などの品種による違いが関係するのか?
・雌雄の違いによる違いなのか?

・・・等、梅の謎について調べました。
今回は、梅の実がならないことに関する知識をまとめました。

スポンサーリンク

梅の実がならない理由は?

梅の実がならない理由は複数の要因があるのですが、その中で一番重要なのは、受粉のチャンスが少ないことです。

梅の開花は通常2月から3月頃であり、まだ気温が低いため昆虫が少ないです。通常の花の受粉にはミツバチなどの昆虫が大切な役割を果たすのですが、昆虫がいないと受粉できませんよね。でも、梅の花の場合は昆虫の代わりにメジロやヒヨドリが受粉作業を行うとされています。このような花を「鳥媒花」と呼びます。自分達の食料として蜜を吸う傍ら、梅の花の受粉をしているのです。

メジロが梅の花で作業をしている様子は以下の動画で確認できます。(ただ、ハッキリ受粉作業をしているかは不明です。)

でも、受粉のチャンスが少ないことだけが理由ではありません。
他に、品種の違いや雌しべと雄しべの仕組みなども要因の1つなのですよね。

では次に、品種の違いについてお話しします。


スポンサーリンク

花梅と実梅の違いは?

梅には300種類以上の園芸品種があり、分類も複数あるのですが、観賞用か食用かという観点で考えると、以下の2つに分けられます。

(1)花梅
花を観賞する目的で(花の形以外に、香りや幹の形、枝ぶり等も美しさを追求)品種改良したもの。開花時期は1~2月頃。

(2)実梅
実を食べる目的で(質の良い実が沢山なるよう)品種改良したもの。開花時期は2~3月頃。

とはいえ、実際にはこの2つはハッキリ区別されているわけではありません。
実梅だから花が美しくないということではないし、花梅だから実がならない、実が食べられない等のことはないのですよね。実梅でも美しいし、花梅でも実はなるし、食べられます。(もちろん、梅は生では食べられないので加工しなければならないのですが。)ただ、花梅の実は実梅よりも味が劣るし、種が大きくて実の部分が少ないという欠点はあります。

そして実際に、偕楽園のような広大な梅園では美しい梅の花が観賞できるし、そこから6月には梅の実が収穫できます。

また、それ以外では以下の3系統の分類があります。

(1)野梅系(やばいけい)
原種に近い品種で、花や葉が小さく、枝も細くて小振り、香りが良いのが特徴。色は白やピンクが中心で、赤色や緑白色もある。

(2)緋梅系(ひばいけい)
花の色が紅色、緋色で、枝や幹の内側も赤い。

(3)豊後系(ぶんごけい)
梅と杏を交配させた雑種なので花が杏の花に似て大形化していて桃色が多い。遅咲き(昆虫が活動する暖かい気候の時期)なので受粉しやすく実がなりやすい(実梅)。

ただ、豊後系以外だと実がならないのか、というとそうではなく、野梅系でも実がなるものもあります。
日本で一番代表的な銘柄である南高梅は野梅系だし、白加賀も野梅系です。(ちなみに、紅色、緋色系の梅は実がなりにくいです。)

では、実がなるかならないか、について他の要素はどうでしょうか。次に雌しべと雄しべに関する話をします。


スポンサーリンク

梅に雌雄はあるの?

雌雄の区別がある木もあるのですが、梅の木は雌雄同株であり、雄花雌花の区別はありません。
ちなみに、下の梅の花を見ると、中心に1本の太い雌しべがあり、その周囲に数十本もの雄しべが放射状に存在していることが分かりますよね。

このように、1つの花の中に雌しべと雄しべが両方存在しているのです。

もっと梅の花の構造を詳しく知りたい場合は以下のページが参考になりますよ。
なんでも梅学:梅の花を解剖
なんでも梅学:図解版 花から果実への発達

でも1本の木しかないと実がなりにくい理由は、自家不和合性(じかふわごうせい)という性質があるからです。(自家不和合性は、自家受粉したとしても遺伝子レベルで認識してしまうため、花粉が雌しべ本体に侵入できずに受精が妨げられることであり、梅と同じバラ科の植物に多い性質です。)

ただ、自家不和合性かどうかは品種によって異なり、自家受粉可能な品種もあります。実梅の中では、南高梅や豊後は自家受粉しにくいのですが、甲州最小、竜峡小梅、花香実などは自家受粉します。

じゃあ、自家不和性の梅でも実がなるようにするためには、どうすれば良いのでしょうか。

これには、以下の方法があります。

(1)もう1本別の品種の梅の木を近くに植える。
ちなみに、植える木として適切なのは以下の通りです。
  ・同じ時期に花が咲く品種である必要がある。
  ・品種としては、小梅(甲州小梅など、実が小さい品種)がおすすめ。小梅は長期間花が咲くし、花粉量も多いため。
  ・梅でなく、同じバラ科の木であるアンズやすもも等でも受粉は可能。

(2)人工授粉する。
花と花を直接つける方法を行うと確実に受粉するとされています。

(3)剪定を適切な時期に行う。
梅の実をたくさん実らせるには、枝の剪定が欠かせません。年2回、6~7月(夏)と12~1月(冬)の2回行うことが必要です。
梅の場合は上に伸びていく徒長枝だと花芽がつきにくく、小枝につきやすいとされています。ですので、不要な徒長枝をこの時期に剪定して日当たりを良くする等が大切です。

剪定方法について詳しい図解はこちらが参考になりますよ。
ウメの枝の剪定方法

さいごに

梅の花は自家不和合性の品種が多いため、1本だと実がなりにくいです。ですから、家で植えるような場合は1本でなく2本植える方が良いです。

また、梅まつりがあるような大規模な梅園だと同時期に他品種が咲くため結実するケースも多いのですが、これも剪定などの手入れをしっかり行ったりして花芽が出やすいようにしなければなりません。また、確実に実がなるようにしたいなら、人工授粉も検討する方が良いです。
今回の記事が参考になれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました