湿疹やアトピー性皮膚炎等が酷い場合、皮膚科医に粉石けんを合成洗剤の代わりに勧められることがあります。
でも、ドラッグストアに行くと、粉石けんは陳列棚の隅にしかないし合成洗剤より高いし、買うのを躊躇してしまう人も少なくないでしょう。
「そもそも、粉石けんって合成洗剤とどう違うの?」
と思ったことはありませんか。
今回は、粉石けんの正体や、合成洗剤を比較したメリットとデメリット、粉石けんの洗浄力を高める使い方についてお話しします。
粉石けんと合成洗剤の原材料を比較すると?
洗濯用の石けんと合成洗剤は、両方とも汚れ落としという点では共通していますが、原材料や特性が全く異なります。
まずは原材料について見てみましょう。
1.石けん
石けんは、脂肪酸ナトリウムか脂肪酸カリウムを原材料とするシンプルな成分で、五千年もの歴史があります。
固形石けんと粉石けんの原材料は脂肪酸ナトリウムで、動植物油脂を水酸化ナトリウムで煮たものです。
液体石けんの原材料は脂肪酸カリウムで、動植物油脂を水酸化カリウムで煮たものです。
2.合成洗剤
合成洗剤は石油や植物油を原材料として化学合成して作られているため石けんよりも複雑な構造で、第一次世界大戦頃に発明されて急速に普及しました。(植物油が原材料の合成洗剤は、ヤシノミ洗剤やトップなどがあります。)
※石けんも合成洗剤も、固形・粉・液体の形状があります。
【合成洗剤が発明された背景】
第一次大戦中に、石けんの原料である動植物油脂が不足して世界的に石鹸不足になり代替品を開発する必要があったため、ドイツで石油を使い合成洗剤を作る方法が発明され、それ以降安く大量生産できるようになりました。
また、ヨーロッパは軟水でなく硬水の地域が多いため、石けんを使う洗濯だと量が多く必要でしたが、合成洗剤は硬水でも問題なく使えて便利なことから、合成洗剤が主流になっていったのです。
では、次に粉石けんが合成洗剤よりも優れている点と劣っている点についてお話しします。
粉石けんのメリットとデメリットは?
日本における洗剤の生産量は、
・合成洗剤・・・約95%
・粉石けん・・・約5%
となっており、日本の家庭の9割以上が合成洗剤を使っています。
でも、実は洗浄力は粉石けんのほうが合成洗剤よりも上なのです。
1.粉石けんのメリット
(1)汚れ落ちが合成洗剤よりも良い
合成洗剤で洗っても落ちない汚れが石けんで洗うと簡単に落ちます。
また、汗で黄ばみが出やすい脇の下や襟を部分洗いする際も、粉石けんでつけ置き洗い、こすり洗い等できれいになりますし、固形石けんも同様です。
加えて、40度程度のお湯を使うと更に洗浄力がアップします。
(2)肌に優しいし、地球環境に配慮しているといわれている
石鹸は、泡立つことで汚れ落とし効果(界面活性作用)が発揮されるため、泡が消えた時点で汚れを落とす力が無くなります(一次分解)。
また、その後は水や二酸化炭素などの無機物に分解(完全分解)されるのですが、ここまでわずか1日で終えることができます。
肌の弱い人がボディシャンプーよりも石けんを使うようにと皮膚科医から勧められるのは、泡が消えた時点で汚れ落とし作用が無くなるため、肌に悪影響がないからです。
一方、合成洗剤の場合は比較的分解が早い商品でも一次分解に丸1日、遅いと数十日かかる商品もありますし、完全分解まで至るには相当長い日数がかかります。
また、合成洗剤には、界面活性剤以外にもキレート剤や蛍光剤等の分解が遅く川や海に溜まり続ける成分もあるため、蓄積され続けると水環境に悪影響を与えると考えられているのです。
2.粉石けんのデメリット
(1)値段が合成洗剤よりも高い
(2)溶けにくい
冷水では溶けにくいため、洗濯(衣類を入れる)の前に粉石けんをよく溶かす必要があります。
特に冬の場合は溶けずに残ってしまうケースが多いため、ぬるま湯で溶かしてから入れるほうが無難です。
(3)泡立っていないと洗浄力が発揮されない
石けんは泡立つことで界面活性作用が発揮されて、汚れを包んで落とします。
そのため、完全に溶けていない状態や、泡立たない状態だと石けんカスが衣類に残りますし、黄ばみ、黒かび、におい等の原因になってしまいます。
(4)洗濯に手間がかかる
以上のことから、合成洗剤なら単純にスイッチポンで洗濯できてしまうのに粉石けんの場合は石鹸が溶けたか、泡立っているか等の確認が必要なので手間がかかります。
合成洗剤が多く普及しているのは「手間がかからない」という理由であり、粉石鹸の洗浄力が劣るという理由ではないのです。
粉石けんの洗浄力を高める使い方は?
粉石けんにはいくつか種類がありますが、炭酸塩30%以上配合のものが洗濯しやすく洗浄力が高いのでおすすめです。
また、粉石けんの場合は洗浄力は確かに合成洗剤よりも高いのですが、使い方を間違えると全然効果が発揮されないので次の3点に注意が必要です。
1.完全に溶かす
溶け残りがないよう洗濯ネットに入れる方法や、手間を省くために先にかくはん翼の上に振り撒いて洗濯物を入れるという方法もありますが、これらの方法だと完全に溶けない可能性もあるため、やはり最初の段階で別容器で粉石けんを完全に溶かしてから洗濯機に入れるのが良いでしょう。
【粉石けんの溶かし方】
(1)手桶に約40度の湯1L程度を入れます。(もっと高温でも、量も多くても構いません。)
(2)洗濯物の量に合う洗剤量を(1)に入れて、すぐにヘアブラシ等でかき混ぜます。
※洗剤をお湯より先に入れるとダマになってきれいに溶けないため、必ずお湯を先に入れましょう。
2.泡立ちを確認する
洗濯物を入れる前に溶かした粉石けんを入れて低水温で給水し、3分程度攪拌して泡立ててから洗濯物を入れます。
(粉石けんは泡立った状態でないと汚れが落ちないため、洗濯物を最初に入れてはいけません。)
石けんの量は市販品のパッケージには洗濯物の量によって目安が書かれており「多く入れすぎないように」となっていますが、どちらかというと泡立ちを維持するために、多めに使うほうが良いのです。
(多く入れすぎると石けん成分がすすぎで落とせず石けんカスが残ると言われていますが、最初に石けんを完全に溶かして泡立てた状態で使えば、きれいにすすぎが出来るため、石けんカスが残ることはありません。)
3.洗濯物を入れてから再度泡立ちを確認する
洗濯物の汚れや量によって、石けん量が足りないことがあります。
そのため、洗濯物を入れたことによって泡立ちが消えてしまった場合は石けんを追加します。
(ここでは粉石けんだと溶けにくいため、液体石けんがおすすめです。もし粉石けんしかない場合は完全に溶かした状態で入れます。
洗いの最後まで泡立っていることが大切です。ただし、あまり気にしすぎて石けんを3倍、4倍と使いすぎないようにしましょう。
もし心配なら、少し石けん液を取り出して、ペットボトルに入れて振ってみて泡立つか確認して、泡立てば大丈夫です。)
定期的な掃除も必要
粉石けんの場合は洗濯槽が汚れやすいといわれています。
洗濯層が汚れた場合は粉石けんをたくさん入れても汚れが落ちなくなるため、定期的に洗濯層の掃除をすることが大切です。
さいごに
赤ちゃんや肌の弱い家族がいる場合は肌に優しい粉石けんのほうがおすすめですが、スイッチポンで洗濯できる合成洗剤手間と違い、ちょっとの手間が必要です。
そのため、手間がかかってできない場合は、合成洗剤が肌に問題なければ合成洗剤を使えば良いでしょうし、体のために手間は仕方ないと思えば粉石けんでも良いでしょう。
ただ、最初は大変だと感じるかもしれませんが、慣れればたいした手間ではないと思いますよ。
ご自身やご家族の体と、洗濯する自分の手間などを考えて優先順位をつけて判断してくださいね。
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