確定申告の医療費対象に予防接種や市販薬は?レシートの扱いは?

季節のはなし

確定申告の医療費控除って、意外なものが対象だったり対象外だったりしますが、
これには一定の「線引き」があるってご存知ですか。
今回は、インフルエンザ予防接種、ドラッグストアで買った風邪薬のような市販薬や氷枕の判定や、
市販品レシートの取り扱いなどをお話します。

■医療費控除の交通費取り扱いについてはこちらをご確認ください。
確定申告の医療費控除で交通費タクシーは?領収書なしも大丈夫?

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確定申告の医療費控除対象に予防接種も入るの?

世の中にはいろんな薬や類似商品があるので個別列挙するとキリがありません。
ですので、基本となる考え方を押さえておきましょう。

医療費控除できるか否かは、「医療目的かどうか」で判断します。
以下、判断に悩む主なものを項目別にピックアップしました。

(1)予防接種

例えば、病気や怪我で通院した場合にかかった費用は「医療目的」なので対象となります。
ですが、インフルエンザ予防接種は医療目的でなく、「予防目的」になるので対象外なのです。

(予防接種の例外規定としてB型肝炎があります。
これは、B型肝炎はうつると大変なためです。
B型肝炎の患者の看病をする家族がうつる懸念があり予防接種を医師が認めた場合に
医療費控除対象となりますが、今のところ他の予防接種は認められていないので、
「一般的な予防接種は対象外」と覚えて起きましょう。)

(2)健康診断など

人間ドックや健康診断は医療目的ではないので対象外です。
ただ、検査でひっかかって精密検査や病気治療を行う場合、
その精密検査や治療費用は「医療目的」になるので対象です。

(3)歯の関係

歯の矯正は、容貌美化が目的なら駄目ですが、
子供の歯並びが悪い(不正咬合)等のように、歯列矯正が必要と認められる場合は対象となります。

(4)目の関係

(1)レーシック手術(近視や乱視の原因である角膜をレーザーで治療し、視力矯正する手術)も医師の診察や治療として行われるので対象となります。
(2)眼鏡購入については、日常生活の必要性から購入するものであり、視力回復という医療目的には該当しないため、対象外です。
ただ、斜視・白内障・緑内障等の手術を行い、機能回復を目的として短期間装用するものや、
幼児の未発達視力を向上のため装着すべき眼鏡で
治療のために必要と医師が認めた場合は医療費控除対象となります。

(5)針灸・マッサージ代

健康維持のための針灸、マッサージ代は対象外ですが、
治療のためであれば医療費控除の対象となります。ただし、通う場所を選ぶ必要があります。
マッサージに通いたい場合で医療費控除を受けたいのであれば、接骨院、針灸院、指圧あんまマッサージ院を選ぶようにしましょう。治療目的とみなされた場合に、交通費含めて対象となります。

ちょっと紛らわしいのでご説明すると、上記については

接骨院→柔道整復師
鍼灸院→はり師・きゅう師(鍼灸師)
指圧あんまマッサージ院(名称は色々有り)→指圧あんまマッサージ師

というように、国家資格を有した人が開業しているのがポイントです。
他にも体の不調を治す場所として、カイロプラクティックや整体、単なるクイックマッサージ等もあるのですが、こちらについては国家資格不要であり、医療費控除の対象には含まれていません。(カイロプラクティックで医療費控除した、という場合は、その施術師が上記の国家資格を有しているはずです。これらの資格は複数所有している人もいるので。)

また、接骨院、鍼灸院、指圧あんまマッサージ院については実費支払が基本ですが、健康保険を適用するところもあります。ただ、医療費控除の点からいうと、健康保険適用か否かは問われず、実費支払い、健康保険適用の支払い両方とも医療費控除可能です。


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医療費対象となる市販薬や医薬品以外の物とは?

医師の認めたもの、通院した際にかかる費用以外にも医療費控除となるものは沢山あります。
市販品も、「医療目的」であれば対象となるものが多いので、具体的にみていきましょう。

(1)医薬品

ドラッグストアで買った医薬品が全て控除になるとは限りませんが、
「具体的な病気や怪我の症状があって、その治療目的で購入した医薬品」は
医師の処方がなくても対象になります。
病気予防の目的は対象外です。

【対象になるもの】

市販のトローチ、肩こり・痛みを取るアンメルツやバンテリン、
風邪薬、頭痛薬、目薬(花粉症など)、マスク、うがい薬、整腸剤、正露丸、胃腸薬、にきび薬、湿布薬、絆創膏など

【対象外のもの】

健康増進目的のサプリメント、常備薬として備えておく薬、酔い止め薬、熱さまシート、目薬(コンタクト乾燥防止など)

(2)医薬品以外

【対象になるもの】

医療用器具では、インシュリン注射のための注射器購入費用など。

医薬品以外の物品では、
入院に必要な氷のう、氷枕(病院から指示があって購入する場合)、
寝たきりの場合の、おむつ(「おむつ使用証明書」を医師に記入してもらうこと)など。

【対象外のもの】

アトピー性皮膚炎の場合の「防ダニ寝具」や、ぜんそく患者の「空気清浄機」などは
医師が購入を勧めたとしても、それ自体が医療用器具等でないため対象外です。


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市販薬のレシートの消費税の扱いは?無関係な記載があると駄目?

医療費は消費税込みの支払額が医療費控除対象となります。

また、ドラッグストアなどで薬を購入した場合などは
薬代のほか、生活用品なども混ざっていることがありますが、その場合も
レシートの薬代の箇所を丸で囲み、その金額のみ申請すれば大丈夫です。
(消費税の額が外税になっていたら、金額に消費税分を加算した金額を
空欄にメモして、合計額で申請します。)
kusuri
領収書を作成してもらうと、レシートと違って「薬代」がいくらか不明になってしまうので
領収書を発行してもらうよりもレシートそのままの方が
内容と金額が明瞭なので良いでしょう。

まとめ

医療費控除の申請は、医師の処方でない市販薬なども対象となるケースが多いです。
昨年分の薬代などをうっかり保存し忘れた場合は、ぜひ今年は気をつけてレシートを保存しておき、
来年の確定申告時に役立ててくださいね。

コメント

  1. ナガシマユウコ より:

    会社の健保組合から発行される医療費通知明細一年分記載されているものでは確定申告できますか?
    私自身障害者で低所得者でなんとか申告できたらと悩んでます。

    • ゆきえ より:

      ナガシマユウコさん

      コメントありがとうございます。
      残念ながら、健保からの医療費のお知らせは、支払者である医療機関が発行したものではないので確定申告の添付書類としては使えないのです。
      ちょっと色々細かいことがありコメント欄に書ききれなかったため、別記事をアップしました。

      医療費控除で領収書がない!紛失時に医療費のお知らせで代用可能?

      詳細はそちらに書いてありますが、次の順でやってみてください。

      1)医療機関に駄目元で再発行をお願いしてみる
      2)医療機関に支払証明書をお願いする(こちらは有料です。数百円で済む医療機関もあれば、数千円かかるところもあります。)
      3)管轄税務署に相談する(税務署の相談コーナーの税理士さんでなく確定申告の担当職員に直接します。)

      費用や確実性を考えると1)から3)の順が良いのですが、1)と3)は難しいかもしれないので、有料とはいえ2)が無難なところかもしれません。
      (2)についても発行してくれない医療機関も時々あるようですが、多くの医療機関ではやっているはずです。)

  2. たんたん より:

    整体医院というのは医師がやっているのであれば保険が使えると思いますが、一般的にこの記事の文脈的には整体医院ではなくて、保険を使った受領委任払の出来る柔道整復師の整骨院、接骨院ではないのでしょうか?

    • ゆきえ より:

      たんたんさん

      コメントとご指摘ありがとうございます。

      >一般的にこの記事の文脈的には整体医院ではなくて、保険を使った受領委任払の出来る柔道整復師の整骨院、接骨院ではないのでしょうか?

      ・・・すみません。ここで書きたかったのは、「整体院」でした。(「医」が間違いです。)
      ただ、ご指摘いただいて文章を読み直したところ内容が曖昧で紛らわしいと感じたので本文を訂正しました。

      ちなみに、整体院も接骨院も、骨格や関節の歪みやズレを整えて体を整えるという点では同じですが、
      接骨院では骨格や関節の怪我治療も可能です。
      また、整体院は国家資格が不要ですが、接骨院を開業する場合は柔道整復師という国家資格が必要となります。

      >整体医院というのは医師がやっているのであれば保険が使えると思いますが、

      ・・・この部分については、私が間違ったのですが、分かりにくいかと感じたので以下補足しておきます。

      整形外科=医師免許が必要
      接骨院=柔道整復師(国家資格)が必要
      鍼灸院=はり師・きゅう師(国家資格)が必要
      あん摩マッサージ=あん摩マッサージ指圧師(国家資格)が必要

      一方、カイロプラクティックや整体については国家資格ではなく民間資格。

      この中で、整形外科は基本的に健康保険適用ですが、それ以外については基本的に健康保険は適用されず、
      その院によって、治療の必要があるか場合に健康保険が適用可能なケースもあります。
      カイロプラクティックのような民間資格のものについては健康保険は提供されませんし、医療費控除対象とはなりません。

      国税庁のHPには、
      「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)」
      引用元:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1122.htm
      という記載があります。

      ただ、実際に接骨院等を開業している場合、他の資格も複数所有している人も多いです。
      そのためか、「カイロプラクティックに通って医療費控除した」と言う人もいるようです(実際、過去に私の知人がやっていました)。
      これは、実際にはカイロプラクティックに通ったかもしれませんが、施術がカイロプラクティックでなく治療目的の接骨院系の施術だったのではないか、と考えています。

      ちょっと長々と書いてきましたが、話を戻すと、
      「治療目的であれば」接骨院や鍼灸院、あん摩マッサージ等に通った場合には「健康保険適用の有無に関わらず」医療費控除対象となる、ということでした。
      (保険適用でないと実費で治療を受けることになりますが、それでも医療費控除が可能、ということです。)

      ですので、こちらに関しても、本文を訂正しております。

      色々細かい点をご指摘いただいたお陰できちんと書き直すことができましたことを深く感謝しております。

  3. がく より:

    セルフメディケーション税制ではなく通常の医療費控除で市販薬代を控除したいのですが、治療目的であればビタミン剤なども申告可能でしょうか?
    具体的にはナボリンSを腰痛目的で服用しています。
    医療費自体は家族分を合算するので10万円を超えます。

    • ゆきえ より:

      がくさん

      コメントありがとうございます。

      国税庁のタックスアンサーを確認すると、

      ・治療や療養目的の医薬品購入→OK
      ・病気予防目的の医薬品購入→NG

      となっています。

      ここで、いただいたコメントに「ビタミン剤」という言葉があったので触れておきますと、
      治療目的なら全てのビタミン剤がOKかというと、そうではないので注意してください。
      どのようなものが該当するかというと、
      「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第2条第1項《医薬品の定義》上の医薬品であることが必要です。

      ただ、今回コメントいただいたナボリンSは「第3類医薬品」になるので、病気予防でなく治療目的であればOKとなります。

      【参考】国税庁タックスアンサー:漢方薬やビタミン剤の購入費用

      ということで、ナボリンSを使う際の目的が「治療」ならOKになります。
      ただ、お書きいただいたのを見ると、「腰痛目的」となっており、「腰痛予防?」「腰痛治療?」と、その言葉だけだと微妙になってしまうので、「治療」という部分をハッキリ認識しておく方が良いと思います。(でも、後日税務署からの問い合わせがなければ、ハッキリ主張する必要もない気がしますが・・・。)

      ということで、ちょっと長くなりましたが、ご理解いただければ幸いです。

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