お通夜に参列するので香典袋を買おうと思っても、いざお店に行ってみたら、不祝儀袋の種類はいろいろあるんですよね。
御香典、御霊前、御仏前・・・この3つの違いは何?
お通夜ではどっちを選ぶべきなの?
このように疑問を抱える人は意外と多いんです。
今回は、お通夜や葬儀に参列する際に用意すべき香典袋について、
・どれを選ぶべきか
・間違えた場合はどうしたら良いか
以上について、分かりやすくまとめました。
◆四十九日法要の表書きで悩む場合はこちらの記事が参考になりますよ。
→四十九日法要の香典は御霊前と御仏前どっち?真っ二つの説を丁寧に解説
御香典と御霊前と御仏前の違いは?
御香典、御霊前、御仏前の3つは全て不祝儀、つまり「不幸があった時に使う袋の表書き」というのが共通です。
では、何が違うのか、というと、
宗旨宗派によって選ぶ物が違う!
ということ。
なぜ、宗旨宗派によって異なるのでしょうか。
それは、それぞれの文字や言葉によって意味することが次のように異なるからなんです。
御香典と御霊前と御仏前 文字や言葉の意味
(典は略字であり、正式には「奠」を使います。香=線香、奠=供え物の意味)
(仏は略字であり、正式には「佛」を使います。)
御香典は、御霊前や御仏前を含む、広い意味での葬儀の供物に対する口語的な言い方です。
通常、葬儀に持参する金品といえば「香典」と言うので、どの宗旨宗派でも、
という言い方で問題ありません。
でも、実際に葬儀に参列する場合は別なんです。
宗旨宗派により「亡くなった方」の魂に対する考え方が異なるのですよね。
だから、不祝儀袋で持参する表書きとして「御霊前」「御仏前」などを使い分ける必要があるのです。
では、どう使い分ければ良いのでしょうか。
次に、お通夜や告別式に何を持参すれば良いのかお話しします。
お通夜は御霊前と御香典のどっちを持参すれば良いの?
宗旨宗派別に、使える表書きは以下の通りです。
では、宗旨による違いについて詳しくお話ししますね。
仏教
仏教では一般的に葬儀の不祝儀袋は「御霊前」を使い、四十九日法要を過ぎたら「御仏前」を使います。ですが、真宗(浄土真宗や真宗大谷派など)では葬儀の時から「御仏前」を使います。
また、「御香典」は「お香の代わりのお供え物」という意味なので、仏教なら全て使うことが可能です。(逆に、神道やキリスト教では線香(香)を使わないため、「御香典」の表書きが使えません。)
なぜ真宗だけ違うの?
仏教の中で真宗(浄土真宗や真宗各派)だけが違うのは、真宗では「人は亡くなったらすぐに浄土に還り成仏する」という考え方だからです。
他の仏教の場合は、人が亡くなると最初は「霊」になり、四十九日法要で成仏して(「仏」に成る)、極楽浄土に行くとされています。
つまり、真宗では「霊」の期間がないから「御霊前」でなく、最初から「仏」であり「御仏前」なのです。
神道
神道の場合は「御玉串料」「御神前」などを使います。
「成仏(仏になる)」ではないので「御仏前」は使いませんが、「御霊前」なら使っても問題ありません。(ただし、白無地の不祝儀袋のみ。蓮の花が印刷してある不祝儀袋は避けましょう。)
神道で「御霊前」が使える理由
神道の考え方では、亡くなったら御霊となり、霊璽(れいじ)に移り神となるとされているからです。
キリスト教
キリスト教は「お花料」ですが、「御霊前」は問題ないとされています。
(ただし、白無地の不祝儀袋のみ。蓮の花が印刷してある不祝儀袋は避けましょう。)
キリスト教で「御霊前」が使える理由
キリスト教の考え方では、亡くなったら霊魂となって神に召されるとされているからです。
香典袋の選び方
基本的には宗旨宗派を基準に、以下の流れで判断します。
宗旨宗派が分からない場合は?
ただ、分からない場合もありますよね。
もし分からなければ、時間的な余裕があれば、斎場に問い合わせると良いでしょう。
葬儀の日時、喪家の名前を言い、
「用意する香典袋の表書きの種類が分からないので教えてほしい」
という旨を伝えれば教えてくれるはずです。
問い合わせる余裕がない場合は?
では、問い合わせる余裕がない場合はどうすれば良いでしょうか?
その場合、以下のことを念頭に入れて判断してください。
御霊前と御仏前を間違えたらどうすれば良いの?
マナーの観点からすると、「御霊前と御仏前を間違えたら失礼にあたる」と言われています。
でも、実は、受け取る側(喪家、遺族)は表書きが間違っているかどうか、なんて気にしないんですよね。
というか、大切な家族を失って悲しみに打ちひしがれている最中であり、文字誤りかどうかなどチェックする余裕がありませんし、香典を間違いなく受け取ったか、金額に誤りが無いか、お返しが必要か、などのことで頭がいっぱいです。
それに、何度も葬儀を経験した人ならともかく、御霊前と御仏前、御香典の違いを詳しく知っている人など多くないし、間違っているものを受け取ったとしても、「失礼なことをされてしまった」とは感じないでしょう。
ですので、そこまで神経質にならなくて大丈夫なんです。
また、本当に宗旨宗派が分からない場合は「御霊前」で問題ない、という意見もあります。
これは、あくまでも個人的見解ではありますが、日本人の多くは「葬儀の時には御霊前を使う」という考えが定着しているからだと思うのです。
ただそうした場合、もしその喪家が真宗だった場合、
「御仏前」にすべきなのに「御霊前」を持参してしまった!
ということになり、相手に失礼にあたります。
でも、真宗が「御仏前」というのは、仏教学などを学んだ人とか葬儀社関連の人や、真宗の信徒でもない限り知らなくて当然なんですよね。今はインターネットですぐに調べることができるけど、高齢の方などはっ調べることなど思いつかないでしょうし。
だから、間違った香典袋を持参してしまうというのは十分あり得ることなんです。
間違っても良い、ということではありませんが、再度正しい香典袋で出し直し、とか、相手にお詫びをしなきゃ、とか思い悩む必要はありません。
実際、私は葬儀の受付を数回経験していますが、その際に、真宗以外の仏教(日蓮宗)だったのに「御霊前」だけでなく「御仏前」が多数ありました。ただ、喪主は全然気にしていませんでしたね。
まとめ
香典は御霊前や御仏前の口語というのが基本ですが、仏教で宗派が不明な場合は「御香典」の不祝儀袋を使えます。
宗旨宗派により不祝儀袋の選び方が異なり覚えにくいのですが、
・・・というのが厳密な判断のしかたです。
ただ、宗旨宗派が全く分からなくて、上記の厳密な判断ができなくても問題ありません。
そもそも、他人が喪家の宗旨宗派を知らなくても当然ですよね。
そして、葬儀会場まで問い合わせして調べなくても失礼ではありません。(逆に、葬儀に参列する全ての人が葬儀会場に問い合わせしたら、葬儀社にとっても迷惑な話でしょう。)
ではどうすれば良いか、というと、「葬儀の際には御霊前を使う」という考えが日本人の多数に根付いていることから、一般的な「御霊前」を用意すれば問題ありません。
もし真宗(本来なら御仏前)だとしても、間違ったもの(御霊前)を受け取ったからといって怒ったり嘲笑ったりすることはありません。だって、香典は亡くなった方のためにお供えするものですし、弔う気持ちの表れなんです。喪家としては、「故人のためにありがとうございます」という気持ちで受け取ってくれるはずですから。
ということで、あまり表書きの細かいことで思い悩まず、葬儀に参列する際には気持ちを込めて手を合わせましょう。
■不祝儀袋の書き方やお札の入れ方で悩んだらこちらをご覧ください。
→御霊前のお札の入れ方は?書き方は薄墨で?中袋だけはペンでいい?
→ご霊前中袋なしで良いの?書き方で住所金額は?お金の入れ方は?
■葬儀や法要のことで分からないことがあったら他にも記事があるのでご覧ください。
→葬儀法要等で恥をかかないための知識集~目次
コメント
四十九日は御霊前とありますが、一般的には四十九日から御仏前です。
どうして四十九日は御霊前なのでしょうか。
こちらのサイトを拝見して反って混乱してしまったため、コメントいたしました。
スガイヒサエさま
コメントありがとうございます。
この四十九日に関する考え方は色々あるようですね。混乱を招くような書き方で申し訳ございません。
同じ宗派でもお寺によって異なるのかもしれませんが、私の実家や嫁ぎ先の菩提寺(曹洞宗と日蓮宗)に訊いた話では四十九日は御霊前で、という話でした。ただ、その時に「うちのお寺では」ということを強調されたのですが、他にも仏事に関するしきたりは、「もちろん他の宗派だと異なることも多いけど、同じ宗派(例えば曹洞宗)だからといって同じとは限りませんので・・・。」ということを言われたのですよね。
で、その後お世話になった葬儀社の担当には「御仏前」か「御香典」の方が無難です、というような話をされましたし、実際に我が家で受け取った四十九日法要の香典は、御霊前と御仏前が混在していた状態で、受け取った側の立場としては、「どちらにしても亡父のためにこれだけの気持ちをいただいたので有難いなあ」という気持ちだけで。どっちが正しくてどっちが間違いで失礼なのか、とか一切思い浮かびませんでした。
記事を書いた身としてすごくお恥ずかしいのですが、この記事を数年前に書いた後、仏事マナーについて触れる機会が多く、その都度、通り一遍でない(宗派だけの括りでなく、地域ごと、お寺などによって様々なやり方がある)ことを深く感じることが多く、この記事についてもどのように見直すべきか、と悩んでいたところでした。
今回いただいたコメントを拝見して、様々なサイトを見て悩む方もいるだろうと思ったので、記事内容についても書き換えております。
今回御返事させていただいた内容とだいたい同じですが、最終的には「御霊前と御仏前、どちらの考え方もある。」ということであり、施主側の立場としては「どちらでも構わない(有難いもの)」というのが私個人的な見解です。
白黒つけられる答えでなく申し訳ありません。